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「研究成果」一覧   ~2022年度~

2022度助成金交付対象の「研究成果」概要   戻る

01 京都大学大学院 工学研究科 材料化学専攻 准教授 倉橋 拓也 様
   (現:関西学院大学 教授)

テーマ:「電子構造変化を活用した機能性触媒によるサステイナブル物質変換」

生体内では鉄を含む様々なポルフィリン金属錯体が、電子構造を変化させることで多様な触媒機能を発現している。そこでポルフィリンなどの金属錯体の電子構造変化に着目して、これを活用した機能性触媒を設計した。これにより、炭素資源とした有用物質生産の新規合成プロセスの開発を達成した。溶液XAFS ならびに量子化学計算により、ポルフィリン鉄触媒などにおいてはその電子構造変化が触媒機能において重要な役割を果たしていることを明らかにした。 (当研究は次年度も継続予定です)



02 大阪大学 大学院薬学研究科 医薬品創製化学講座 助教 佐古真 様

テーマ:「電解反応を活用するヘリセン分子の省エネルギー型ワンポット合成」

ヘリセンは複数の芳香環がオルト位で縮環した非平面性らせん状化合物であり、光学活性なへリセンは不斉触媒への応用や、その独特な光学的、電子的性質から機能性化合物への利用が期待されている。本研究では、電解合成を利活用し調達容易な反応基質からへリセン類の効率合成を目的とした。検討の結果、ヒドロキシカルパゾールと2-ナフトール誘導体を電解合成条件に付すことで、複数の複素環を骨格中に有するヘテロ[7]へリセン、及びヘテロ[7]ヘリセンの両末端の芳香環聞が酸化的に閉環した8員環生成物であるデヒドロ[7]ヘリセンを効率よく得ることに成功した。いずれの化合物についても光学純粋体のキラル光学特性について評価し、それらが円偏光発光特性を有することを明らかにした。



03 奈良先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科
   バイオサイエンス領域 教授 渡辺 大輔 様

テーマ:「生物学的炭素隔離に貢献する次世代型酵母の創製」

申請者は、酵母Saccharomyces cerevisiaeの高い炭素吸収能力を保持したままアルコール発酵力を欠損させることで炭素を貯留する生物学的炭素隔離に利用できると着想し、2種類の方法により酵母のアルコール発酵力の改変を目指した。清酒酵母の研究から独自に見出した炭素代謝スイッチングのためのシグナル伝達経路を改変し、清酒酵母とは逆にアルコール発酵が欠損した酵母を作出したところ、細胞壁に貯留される炭素量を約2倍に上昇させることができた。また、アルコール発酵調節に関与する新規因子を網羅的に探索した結果、発酵促進遺伝子220個と発酵抑制遺伝子286個を新規に同定した。中でも、細胞外のリン酸をモニターするシグナル伝達経路の鍵を握るPho80p・Pho85p複合体を欠損すると、アルコール発酵力が顕著に低下し、新たなアルコール発酵のデザインのための標的因子として有望な知見を得た。



04 京都大学 大学院人間・環境学研究科相関環境学専攻
   分子・生命環境論講座 教授 藤田 健一 様

テーマ:「グリセロールを原料とする水素と有用有機化合物の持続可能な同時製造法の開発」

本研究は、世界的に余剰となっているグリセロールを原料として有効活用することを目的として遂行した。グリセロールは植物資源由来の油脂から持続的に得られるため、本研究の推進により、カーボンニュートラル社会の実現に貢献すると期待される。まず、グリセローノレの脱水素化反応における最適条件検討を行い、超脱水アニソール溶媒中、イリジウム錯体触媒を用いることにより、収率95%で水素を得ることを達成した。この反応系は、過去のグリセロールの脱水素化反応の報告例と照らし合わせてみても、塩基を使用せず高収率で水素が得られるため、効果的であるといえる。


05 京都工芸繊維大学 分子化学系 化学工学研究室 教授 堀内 淳一 様

テーマ:「赤色酵母を用いた未利用バイオマスの有効利用による
      アスタキサンチン・キシリトールの同時発酵生産プロセスの開発」

本研究では、培養工学的アプローチによりバイオマス原料としてコーンコブを用いた X.dendrorhousによるアスタキサンチン生産の効率化を試みた。コーンコブから得られたコーンコプ糖化被を用いて回分培養を行ったところ、0.8mg/Lのアスタキサンチンが生産されたが、誘導期が約100時間と極めて長期化し、この原因は、コーンコブ糖化液に含まれる酢酸による増殖阻害と考えられた。
そこで酢酸生成の原因となるバイオマス中のアセチル基を除去するためにアルカリ前処理を追加したところ、コーンコブ糖化液の酢酸濃度を2.5g/Lから0.18g/Lに低下できた。このコーンコプ糖化液を用いて同様の実験を行ったところに誘導期は約24時間と約4分の1に短縮し、アスタキサンチン生産を2.85mg/Lまで大幅に向上させることができた。以上の結果から、バイオマスを原料とした X.dendrorhousによるアスタキサンチン生産において、糖化液中の酢酸濃度を低く保つ重要性が判明した。


06 奈良先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科
   情報機能素子科学研究室 助教 來福 至 様

テーマ:「ベロブスカイト型太陽電池の低環境負荷プロセスの実現に向けた電子輸送層の検討」

ベロブスカイト型太陽電池は高い変換効率やフレキシブル化が可能な点、および低照度環境下でも効率良く発電可能であることから、次世代の太陽電池として注目を集めている。本研究ではベロブスカイト型太陽電池の低環境負荷プロセスの実現に向け、電子輸送層として用いられている酸化チタン薄膜の水溶液プロセス化について検討を行った。水溶性チタン錯体を合成し、その水溶液を前駆体溶液として用いることにより酸化チタン薄膜を作製し、太陽電池応用を行った結果、15.37%の変換効率が得られた。これは有機溶媒を用いた従来プロセスの14.92%と同等の値であり、本成果はベロブスカイト型太陽電池の低環境負荷プロセスの実現に大きく貢献するものであると期待される。


07 大阪大学大学院 理学研究科 高分子科学専攻 助教 小林 裕一郎 様

テーマ:「余剰資源である硫黄を原料とした重縮合系硫黄ポリマー材料の開発」

これまで連鎖重合にて硫黄ポリマーを合成するのが一般的な中で、世界で初めてエポキシモノマーを用いた重縮合反応にて硫黄含有エポキシ硬化物の合成に成功した。興味深いことに、得られた硫黄含有エホキシ硬化物は硫黄数の違いにより異なる機械物性や自己修復性を示し、硫黄数が多いほど強靭・タフ・高い自己修復性を示した。今後は硫黄ポリマーの学理構築を目的に他の重縮合系硫黄ポリマ一合成を達成する。



08 立命館大学 生命科学部生物工学科 構造生命科学研究室 教授 松村 浩由 様

テーマ:「二酸化炭素固定酵素Rubiscoの触媒活性上昇の構造的要因の解明」

Rubiscoは光合成カルピン・ベンソン回路の初発反応を触媒する酵素であるが、触媒速度が極端に低く、酸素固定反応(オキシゲナーゼ)が二酸化炭素固定反応を競合阻害するといった酵素として好ましくない性質を持つためRubiscoは光合成の主な律速因子である。代表者らは、イネRubiscoの大サブユニット(RbcL)とC4植物ソルガムRubiscoの小サブユニット(RbcS)とが組み合わさったハイブリッドRubiscoが触媒活性を約2倍上昇させることを見出したが、その構造的要因は不明である。そこで本研究では、さらに異なるハイブリッドRubiscoの構造機能解析を行った。これによって、Rubiscoの触媒速度上昇の構造的要因がスモールサプユニットのβへアピン付近の立体構造の違いにある可能性を考察している。


09 立命館大学 理工学部機械工学科 准教授 吉岡 修哉 様

テーマ:「勾玉形(まがたまがた)垂直軸風車と
      フレキシブル太陽電池を併用する地産地消型の再エネ小型電源システム」

新しい小型垂直軸風車である勾玉形風車を用いる小型再エネ電源システムの基礎的な検討を行った。本システムでは風車プレードにフレキシブル太陽電池を装着して風力と太陽光の双方から発電出力を得る。
本研究では、垂直軸風車の風車プレードに装着するフレキシプル太陽電池の出力を評価した。まず、立命館大学のピル屋上に実験サイトを準備した。ここに設置した架台に、風車を模擬した平板を回転させる実験装置を設置した。この回転平板にフレキシプル太陽電池を装着し、発電性能を評価した。実験は、気温、風速、太陽高度、日射強度が異なる状況で、複数回行った。太陽電池は回転しているため、回転ごとに発電量が増減した。回転する太陽電池の発電量を、地上に固定した太陽電池の発電量と比較した結果、回転する太陽電池の方が大きな発電量となった。これは、回転により太陽電池が冷却された効果と考えられる。



10 立命館大学 理工学部機械工学科 エネルギ一変換デバイス研究室 教授 渡部 弘達 様

テーマ:「バイオマスガス化SOFC発電に向けた電極触媒構造のミクロスケール設計」

固体酸化物形燃料電池(SOFC)は小型でも高い発電効率が可能であり、天然ガス、プロパン、バイオマスガス化ガス等、多様な燃料を用いることができる。しかしながら、炭化水素燃料をSOFCの燃料極に供給した場合、炭素析出が進行し 電極が劣化する課題がある。本研究では、電解質のドーパントを調整し電解質構造から炭素析出の抑制を試みた。Ni/YSZとNi/ScSZにおける炭素析出挙動を非発電モー ドと発電モードで検討し、燃料CH4,S/C(Steam-to-Caron)比=0.15,700℃の条件における非発電モードでは、イオン半径の大きいY(イットリウム)の方が,イオン半径の小さいSc(スカンジウム)よりも炭素析出耐性に効果があり、ドーパントから炭素析出を制御できることが明らかになった。また、発電モードでは非発電モードよりも電極上の炭素析出が抑制されることが示された。



11 大阪大学大学院 工学研究科応用化学専攻 テニュアトラック 助教 岡 弘樹 様

テーマ:「バイオマス資源を活用した持続可能なCO2フリー水素製造法の開発」

水素は、エネルギー密度が高く、燃焼しても水しか生成しないため、次世代のクリーンなエネルギー源として注目を集め続けており、その活用には持続可能な水素製造法および安全な運搬法の確立が必要不可欠である。本研究では、代表的なバイオマスであるセルロースから得られ、生分解性も有するジヒドロレボグルコセノン(Cyrene™) を用いて、パン酵母による水素化と耐久性の高い金属錯体触媒による水素発生を組み合わせた、新しい持続可能な水素製造および貯蔵のサイクノレを実証した。


12 兵庫県立大学大学院 工学研究科 電気物性工学専攻 准教授 多田 和也 様

テーマ:「照射光の時空間変調による色素増感型太陽電池の高効率化」

本研究では,PWM変調光下での色素増感型太陽電池に特有な現象として、変調周波数を高くするとパワー変換効率が無変調の場合と変わらなくなることを実験的に示すことに成功した。この現象は色素増感型太陽電池特有の直列抵抗の一部が,電気化学的な疑似容量成分を並列に持つために,高周波領域では低減されるためであると考えられる。この結果は本研究計画立案当初に期待したように、照射光の時空間変調を行うことで高効率化が可能であることを強く示唆する。この電気化学的インピーダンスのまた、色素増感型太陽電池が、PWM変調などの以前には存在しなかった照明の様態を伴う、固体照明時代の室内光発電に適する証拠の一つを見出したともいえる。



13 京都大学大学院 理学研究科化学専攻 金相学分科 准教授 植田 浩明 様

テーマ:「コバルトフリーフェライト磁石の高性能化」

マグネトプランバイト型のストロンチウムフェライトの鉄の一部をマンガンで置換した物質の単結晶の育成に成功し、マンガンは三価のイオンとして存在することが示された。保磁力の理論的な限界を決める異方性磁界は若干増大したものの、飽和磁化は減少し、マンガンがアップスピンのサイトを占めていることが明らかになった。また、結晶場下での電子状態の計算から、三価のマンガンイオンが特定のサイトを占めた場合に、磁気異方性の向上が予想されることが分かり、三価のマンガンイオンによるフェライト永久磁石の性能向上の可能性を示すことができた。



14 奈良先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科
   機能有機化学研究室 助教 林 宏暢 様

テーマ:「高効率励起一重項分裂を実現する分子設計指針獲得を目指したぺンタセン多量体合成」

ペンタセンは、有機薄膜太陽電池の発電効率を大幅に向上させる可能性を有する励起一重項分裂(SF)現象を発現する化合物として知られている。効率的なSF現象を示す分子設計指針獲得には、モデル分子として、ペンタセンを共有結合で連結させた多量体の利用が有用であるが、ペンタセンの難溶性・不安定性の問題から多量体合成には工夫が必要である。本研究では、「前駆体法」と呼ばれる手法を用いて、アセチレンで、架橋されたペンタセン多量体の合成を行った。多段階有機合成を用いることで、ペンタセン4量体の前駆体合成に成功した。興味深いことに、単量体の反応条件を探索する際、アセチレンで架橋された単量体から5量体までの多量体がワンポットで生成する条件を見出した。この発見は、効率良くアセン多量体を合成する手法開拓につながる成果である。最終的に、ペンタセン3量体および4量体前駆体を加熱変換することで、対応するペンタセン多量体の合成に成功した。



15 京都大学大学院 工学研究科 化学工学専攻
   エネルギープロセス工学講座 准教授 田辺 克明 様

テーマ:「機能性半導体接合技術による超高効率太陽電池の開発」

太陽電池の高性能化には、太陽光の幅広い波長域の有効活用が重要です。そのために、各々が固有の吸収波長帯を持つ半導体材料を複数積層した多接合太陽電池は、高効率化手法の代表例です。本研究では、波長変換材料を介した半導体接合法を提案、開発するとともに、当技術を用いた太陽電池を作製し、発電性能の向上を実証しました。その結果、今回開発した手法で作成した太陽電池は、一般的な従来型の太陽電池に比べて2割程度の電流の増大、3割程度の発電効率の上昇を観測しました。この手法は、これまでの技術では難しかった、接合の形成と光機能の導入を同時にもたらし得る半導体界面工学の新しい概念と言えます。汎用性の高い技術であり、多接合太陽電池の高効率化や、光コンビューターなどのデノ〈イスの高性能化につながることが期待されます。



16 神戸大学大学院 理学研究科 化学専攻無機化学講座 准教授 髙橋 一志 様

テーマ:「原子価異性に基づく革新的分子性強誘電材料の創製」

二つの等価な三座配位子からなるホモレプティック金属錯体において金属一配位子間電子移動現象である原子価異性が発現すると錯体分子内に電気分極が生じるため、電子移動型強誘電体を与えることが期待される。本研究では、ホモレプティックNiIII錯体アニオンの非可逆原子価異性のメカニズムの解明と可逆な原子価異性転移発現を目指し三座配位子からなる新規Ni錯体の合成、構造と性質について検討した。非可逆転移のメカニズムとしては、NiIIIイオンから配位子への電子移動を示唆する結果が得られた。また、新規Ni錯体として、分子内分極を有すると期待される中性Ni錯体2種類が得られた。今後、これらの錯体のキャラクタリゼーションを通じて電子移動型強誘電体の設計指針を明らかにしていく。



17 大阪公立大学 工学研究科 環境保全工学研究グループ 教授 大久保 雅章 様

テーマ:「ゼロCO2エミッション火力発電のための環境プラズマ技術」

地球温暖化の主な原因物質である二酸化炭素(CO
2)の排出削減は急務であり、より低コストかつ高効率のCO2処理技術が求められている。本研究では,プラズマリアクタ内に充填している吸着剤によって大気中CO2を吸着したのち、発電電力の一部を用いてリアクタ内で非熱プラズマ(Nonthermal plasma: NTP) 流を生成してCO2を脱着・濃縮する。そして合成燃料や化学原料として利用でき工業的利用価値が高い一酸化炭素(CO)を高効率に生成するシステムの構築を行うことを目的とする。本研究によりNTPと吸着剤,触媒,排ガス中の水分の影響を明らかにし、システムの高性能化を達成することができた。しかしながら、還元に要する電力生成時のCO2排出量はCO2処理量を以前上回っているため,ゼロエミッション火力発電所の概念実証のためには,さらなるエネルギー効率の向上が必要で、ある。


18 奈良先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科 有機エレクトロニクス研究室
   准教授 辨天宏明 様

テーマ:「オペランド、局所電子機能マッピングで解明するポリマー太陽電池の発電阻害因子」

電子ドナー(D)性、電子アクセプタ(A)性有機半導体のブレンド膜を光活性層に用いる有機薄膜太陽電池ではナノメートルスケールでのD/A相分離構造が太陽電池の性能(光電流、光起電力、曲線因子)を左右する。本研究では電流計測原子間力顕微鏡を用いて光活性層でのD/A相分離構造と発電特性をナノスケールで計測し、太陽電池性能を律速する局所の電子的・構造的原因(発電阻害因子)の特定を進めた。特に現在まで性能向上に向けた明確な指針が得られていない三元ブレンド型有機薄膜太陽電池に対してナノメートルスケールでの光電流・光起電力の分布を可視化し、発電阻害因子の特定を行った。



19 京都大学大学院 エネルギー科学研究科 国際先端エネルギー科学研究教育センター
   助教 岡崎 豊 様

テーマ:「電源が要らない高純度円偏光変換器を用いた太陽電池の高効率化」

円偏光照射による太陽電池の変換効率向上効果が実証されたことにより、太陽光を高純度円偏光に変換する技術は注目を集めている。しかしながら、光量を落とすこと(エネルギー損失)なく太陽光(非偏光)を高純度円偏光に変換することは困難とされていた。本研究では、独自に提案した電源要らずの高純度円偏光変換器の主要部である直線発光性(LPL)材料としての利用を想定し、外部量子収率が低い光から高い光に変換するLPL材料の作製を行った。具体的には、紫外光を吸収し可視光を発光する発光性有機化合物の遷移双極子モーメントをフィルム中で一次元配向させた直線発光性(LPL)フィルムを作製した。分子構造のアスペクト比が大きな高分子性発光体(PFO-PPPやDI0-PFO等)に加えて、低分子性発光体(DPH等)においてもフィルム延伸法にて大きな偏光度を示すことがわかった。今後は、作製したLPLフィルムを位相差フィルムと積層させ、擬似太陽光下における波長変換特性および偏光特性評価を行う予定である。


20 大阪公立大学 大学院工学研究科 物質化学生命系専攻応用化学分野
   物性有機化学研究グループ 特任助教 大垣 拓也 様

テーマ:「次世代太陽電池に向けた有機極性結晶材料の開発」

脱炭素社会に向け、未踏の研究分野である有機シフト電流太陽電池は有望であるが、材料に用いられる有機極性結品の合理的設計は困難である。これに対し本研究では、有機極性結晶材料の開発を目指し、独自の結晶構造制御の戦略として「極性層状ヘリンボーン構造」を提案した。新規に開発した分子は、有機極性結晶に分類される空間群であり、 CH・・・π接触により二次元層状ヘリンボーン構造を形成した。さらにこの層状構造が分子間ハロゲン結合によって、分極の向きを揃えて積層した「極性層状ヘリンボーン構造」となることが明らかになった。この他にも、同様の結晶構造を形成する分子群を開発できたことから、 「極性層状ヘリンボーン構造」が新たな構造モチーフとなり、有機極性結晶材料の合理的な設計戦略となることが期待される。



21 京都大学大学院 工学研究科 化学工学専攻反応工学分野 助教 墳 大裕 様

テーマ:「低温低水素圧下でのバイオマス由来糖ポリオール類の
      水素化用触媒反応プロセスの構築」

キシロース水素化反応によるキシリトール合成を低水素圧下かつ高選択性で実現する触媒反応プロセスの開発に取り組んだ。不活性な炭素担体に適度な水素化活性を持つCuを担持した炭素担持Cu触媒が有望と考えた。弱酸性陽イオン交換樹脂を炭素担体の前駆体とし、①イオン交換反応による樹脂へのCu
2+の担持、②Cu2+含有樹脂の熱処理による樹脂の炭素化とCu2+の還元の手順により、Cuを高担持量かつ微粒子状態で炭素担体で内包した触媒を開発した。得られた触媒はキシロース水素化反応に対し、1.1MPa以下の水素圧においても94%以上の高いキシリトール選択率と、繰り返し利用が可能な高い触媒安定性を示すことを見出した。水素の触媒表面への供給速度の向上が触媒反応活性の向上に重要であるとの知見を得た。


22 京都大学大学院 工学研究科 社会基盤工学専攻 准教授 奈良 禎太 様

テーマ:「コンクリート粉末の注入による地盤の力学安定性確保と地球温暖化抑制技術の創出」

二酸化炭素(CO2) を大気中に排出させずに地下に固定し、さらに地盤材料の遮蔽性能や強度の向上を起こすことを目的として、CO2を水に溶解させ、コンクリートの粉末とともに地盤に注入し、地盤内の欠陥構造を粉末で充填させ、さらにCO2を鉱物固定する方法を考えた。その結果、コンクリート粉末と炭酸水の注入によって、岩石(堆積岩)における透水係数の低下が認められた。これは、き裂や空隙が粉末によって充填されることや、炭酸イオンとカルシウムイオンの化学反応によって炭酸カルシワムがき裂・空隙内部に沈殿することによるものと考えられる。これにより、CO2を大気中に排出させずに岩石内に固定し,岩盤の遮蔽性能や力学的安定性の確保に貢献できることが示された。



23 兵庫県立大学 高度産業科学技術研究所 機能性マテリアル物性講座 教授 神田 一浩 様

テーマ:「軟X線放射光と低速陽電子線の組み合わせによる
      アモルファス炭素膜の新しい構造分析法の確立」

軟X線放射光を用いたX線吸収分光法により実在する原子の局所構造を把握し、低速陽電子線を用いた陽電子消滅寿命法により物質のない自由体積の構造の情報を取得し、両者を組み合わせて、アモルファス炭素膜(DLC膜)の新しい構造分析法を確立することを試みた。製膜法や製膜条件の異なる様々なDLC膜を測定し、陽電子消滅寿命やドップラー拡がり法から得られるS-パラメータは自由体積がDLC膜の密度や硬度と強い負の線形関係にあることを突き止めた。一方、DLC膜中の炭素原子のSp2/(Sp2+Sp3)比とは相関関係が無く、自由体積がSp2/(Sp2+Sp3)比と独立した構造因子であることを明らかにした。さらに、軟X線照射により、高水素化DLC膜から水素が脱離する過程について観測を行い、軟X線の照射により自由体積が増加することを観測しただけでなく、自由体積の周辺の化学環境が変化したことを陽電子消滅寿命法で観測することに成功した。


24 大阪公立大学大学院 理学研究科 有機化学講座 教授 小嵜 正敏 様

テーマ:「ヘテロ原子をドーピングしたグラフェンリボンの開発と有機デバイスへの応用」

分極型縮合多環化合物には電荷分離、長波長吸収・発光、小さなHOMO-LUMO差などの性質が期待できるため、次世代有機発光素子、有機太陽電池などへの応用が研究されている。フェノチアジン、カルバゾール、ピレン骨格を電子豊富部、ジアザピレン骨格を電子不足部として注目し、二つの部位の組み合わせで、構成される一連のヘテロ原子をドーピングしたグラフェンリボンを合成し性質を評価した。独自開発したジアザピレン骨格構築法を応用することで入手容易な市販化合物から短段階で化合物の合成を達成した。化合物の構造と性質をX線構造解析、分光学的測定、電気化学測定および量子化学計算の結果をもとに詳細に明らかにした。その結果、化合物を構成する二つの部位の分子軌道の特性や縮環形態がグラフェンリボンのHOMOとLUMOの特性に大きな影響を与えることを明らかにした。



25 京都大学 工学研究科物質エネルギー化学専攻 機能性材料化学分野 准教授 西 直哉 様

テーマ:「Cu系ハイエントロピー合金ナノ粒子の合成法の創製と電気化学CO2還元への応用」

イオン液体と油との間の液液界面を反応場として、AlとCuを還元析出させた。どちらについても、金属ナノ構造が析出することを確認した。Alについては詳細な反応解析を、溶存種については27AlNMR測定を、発生ガスについては検知管による同定により実施し、反応機構を明らかにした。イオン液体|油界面におけるAl還元反応(界面電子移動)において、それに伴う両液相の電荷補償はイオン液体から油へのイオン移動が担っていることが確認できた。


26 京都大学大学院 工学研究科 量子機能工学講座 助教 石井 良太 様

テーマ:「超短波長発光する深紫外LEDの高効率化に向けた高Al組成AlGaN量子井戸構造の
      輻射・非輻射再結合機構の解明」

空気中を漂うウイルスを不活化する深紫外LEDに注目が集まっている。しかしながら、現在の深紫外LEDの外部量子効率(発光効率)は低く、その高効率化が喫緊の課題となっている。そこで本研究では、深紫外LEDの外部量子効率を低くたらしめている原因を明らかにすることを目的として、 AlGaN量子井戸構造の輻射・非幅射再結合過程の実験的評価を行った。具体的には,波長223nm、235nm、および265nmで発光するAl組成の異なるAlGaN量子井戸構造に対して温度可変環境でフォトルミネッセンス分光および時間分解フォトルミネッセンス分光を行った。この実験結果を解析することにより次の結果を得ることができた。すなわち、LEDの外部量子効率は内部量子効率、電流注入効率、および光取り出し効率の積で記述されるが、265nmで発光する深紫外LEDの内部量子効率は十分高かった(-60%以上)。一方、223nmと235nmで発光する深紫外LEDの内部量子効率は低く留まっていることが分かった(10%以下)。



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・ その他、必要に応じて掲示いたします。